すしフェスタ開催

近頃では養殖の貝が増えており、安全管理や貝の中身の分析技術も進んでいるから、出荷前のチェックで、不用意な中毒はほとんどなくすことができるそうだ。 技術の向上や情報の普及のおかげで、食べものによる中毒はずいぶん防げるようになった。
が、問題なのは誘導性の毒と慢性の毒。 本来毒として認識されていないものが、ある条件によって毒が誘導されたり、あるいは長期間の摂取によって発現する毒のことである。

最初から毒だとわかっている毒キノコやフグ毒とは、また違った感覚で対応していく必要があるのだ。 たとえば、いまYさんが懸念しているのが、昨年凶作のため外国からの緊急輸入に踏みきり、なにかと議論を巻き起こしている米。
「運ばれる途中でカビが生えることがあるんですが、その中に発がん性のトキシンを生産するようなカビが紛れていると、米が汚染されてしまい、たいへん危険です」戦後の米不足のときに起きた「黄変米事件」をご存じだろうか。 日本にカビに対する衛生知識がなかった当時、外国から輸入した米を倉庫に山積みしていたら、カビが生えて黄色くなった。
調べてみると肝臓に対してひじように強い毒素があり、食べると肝硬変、さらに肝臓がんになる危険が高いことが判明。 あわてて、かなりの量を廃棄したという。
現在は米に限らず、日本に輸入される食物は入口でかなり厳重な検査がされているが、もしカビの胞子が少しでも残っていて貯蔵管理が悪いと、カビの発生により毒が誘導される危険性がある、とYさんは警告している。 ところで、世の中のあらゆるものに流行があるように、食中毒にもやはり時代に応じた流行りがあるようだ。
「食生活の変化にともなって、食中毒の中身も変わってきましたね。 この頃は昔のように生のものを煮炊きして食べるより、保存食品が多くなってきたでしょう。
缶詰や真空パックが増えたから、酸素に触れて育つような食中毒菌の代わりに、空気を嫌うボツリヌス菌のような嫌気性菌による食中毒が現れるようになりました。 それと、食中毒のスケールが個人や家族の単位から、集団化してきたことも特徴の1つです。
大量生産によるレトルトパックなどが学校給食や食堂へ供給されることによって、もとが同じというものを、大勢の人がいっぺんに食べるようになったからでしょう」いま、ちまたには世界各地から輸入された食材が出回っており、私たちが口にする食べものの種類は飛躍的に多くなってきた。 それにより、これまでにはなかった新しい毒が加えられることもあるのだ。
こうなると、先人たちが身をもって教えてくれた「知識」だけでは、たちうちできない。 人間と食べものの毒とのいたちごっこは、これからも続くようだ。
鶏肉のことを昔はかしわと呼んでいた。 なかなかコクがあって、おいしそうな響きである。

確かに、かしわの時代を知っている人にいわせると、「いまどきの鶏肉は、水っぽくて食べられたもんじゃない。 それにひきかえ、昔のかしわはうまかったねえ」養鶏僻卵業を営むMさんも、昔のかしわの味にこだわる一人。
十年ほど前から「おいしい鶏肉」の研究を続けている。 ところで、現在日本で売られている鶏肉には約5十種類ものブランドがあり、いまどきの鶏肉といっても、十把ひとからげにはできない。
代表的なものでは、おいしい鶏肉の代名詞にもなっている「名古屋コーチン」、秋田の郷土料理キリタンポには欠かせない「比内鶏」、鹿児島の「薩摩鶏」、Kの「Kコーチン」などなど……。 一般に地鶏と呼ばれているものだ。
「厳密には、名古屋コーチン以外は地鶏にほかの品種を掛け合わせたもので、特殊鶏肉と呼ばれています。 これは繁殖性をよくするためです。
純粋種よりやや味は落ちますが、グレードは高いですね」ところが、これらの銘柄鶏は、現在流通している鶏肉のほんの1割程度。 消費者がスーパーでお目にかかる鶏肉のほとんどは、例のブロイラーだ。
では、このいまどきの鶏肉と昔のかしわ、いったいどこがどう違うというのだろう。 「ブロイラーが普及する昭和40年頃までに、日本人が食べていた鶏肉というのは、卵を生まなくなった親雌、つまり廃鶏でした。

おいしかった昔のかしわは、要するにこの廃鶏のことなんです」廃鶏というと、なんだかあんまりおいしそうじゃないが、鶏が卵肉兼用として飼われていた当時は卵をよく生んで、しかも肉がおいしいというのが大前提だったから、味のほうは折り紙つき。 産卵寿命の終わった雌鶏は適度に身が締まっていて、味に深みがある。
熟年の味といったところだ。 一方、「ブロイラーはもともと、第2次大戦中のアメリカで肉が不足したため、大量生産をはかろうと改良されたものです。
いかに少ない餌で、いかに短期間にたくさんの肉をつけるかと、ひたすら生産性を追求した結果、味は2の次になったわけです」その後、日本でも品種、飼料、飼育方法などの改良が重ねられ、できあがったのが現在のような生産システムである。 「現在のブロイラーは、白色プリスマスロックという品種のメスと、コーニッシュという品種のオスを掛け合わせたものです。
窓のない鶏舎に詰め込まれ、給餌や給水は自動、餌が見えるようにわずかな灯がついています。 一坪あたり60羽から70羽などというのもざらで、まさに身動きがとれないという状態。
というより、太り過ぎて動けないというのが正解ですね。 餌を食べる以外はじっと座り込んでいますから、これでは肉が水っぽくなるのも当然ですよ」さらに、鶏肉の味を左右する大切な要素が日齢、つまり僻化してから出荷するまでの飼育日数である。
歯ごたえがあって味もおいしくなるのは100日から120日といわれているが、ブロイラーは約8週齢で出荷されている。 「人間でいえば小学校一、2年生です。
飼育期間が長ければそれだけコストもかかり、値段が高くなりますからね。 名古屋コーチンなどは4カ月から5カ月を基準としていて、肉は少し硬くなるが、味がとってもよくなるんです。
ブロイラーだって100日ぐらいまで育てれば、ずいぶんおいしくなるんですがね。 以前にこんな経験をしたことがあります。
中国の深洲で、ブロイラーの養鶏をしている人がいたんですが、彼自身は120日ぐらいの地鶏を食べているという。 では、これは誰に売るのかと聞いたら、日本だそうで、逆に日本人はなんでこんなものを食べるのかと聞かれてしまいました」ところが、人の味覚というのはじつにさまざま。

ある人にいわせれば「こんなもの」でも、食べる人によっては「柔らかくておいしい」となる。 「私の孫たちは、地鶏は硬いからといって、ブロイラーしか食べませんよ。
それに、以前の調理方法は煮るのが主流でしたが、いまは炒めたり揚げたりです。 つまり、昔のように肉そのものを味わうのでなく、肉にいろいろな味をつけて、その味を楽しむようになったわけです」いってみれば、ブロイラーは味がないのがいいところ。
それを昔のかしわのように野菜と一緒に煮たり、水炊きにしても、おいしいわけがない。 「それに、値段がひじょうに安いことも消費者にとっては魅力でしょうね。
ブロイラーは100グラム100円以下ですが、現在市販されている名古屋コーチンは100グラムで350円ないし400円です。

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